<会場となる鉄輪地区・冨士屋Gallery一也百 (はなやもも)>
|KASHIMA (カシマ) とは|
「KASHIMA」は、NPO法人BEPPU PROJECTが2008年より継続開催しているアーティスト・イン・レジデンス事業です。別府の温泉文化の中に息づく湯治のための宿泊形態「貸間」から名付けられたこのプログラムでは、海外から訪れたアーティストが別府の町に長期間滞在し、町や地域の人々との交流のなかで様々なインスピレーショ ンを受けながら、作品をつくっていきます。
今回は、別府のなかでも特に湯治文化の発達した鉄輪(かんなわ)地区で、この事業に取り組み、 成果発表としての展覧会も開催します。 また、イギリスのキュレーター、キース・ウィトルが別府および冨士屋Gallery一也百に合わせて選定した2名のアーティストが、招かれています。
|アーティスト & 作品紹介 |
●アダム・チョズコ Adam Chodzko
[ 滞在期間=7月2日~8月9日 ]
1965年、ロンドン生まれケント(ロンドン近郊)在住、男性。マンチェスター大学、ロンドンのゴールドスミス・カレッ ジで学ぶ。2002年、ポール・ハムリン・ファウンデーションと、ニューヨークのファ ウンデーション・フォー・コンテンポラリー・アーツから賞を授与され、2007年には、 カンタベリーのケント大学映像学科におけるAHRC(アーツ・アンド・ヒューマニティー ズ・リサーチ・カウンシル)研究フェローシップを獲得した。ドローイング、立体作品、 パフォーマンスから映像作品に至るまで、多岐にわたって作品を手掛け、自身をとりま く環境を利用しながら、しばしば鑑賞者を惹きつけて巻きこむような手法をとる。その 作品の多くは、結果の見えない、予測不能な、偶然の要素を表出している。
◎ 作品について
それぞれ複雑なレイヤーを持った4種類の作品があり、一つの和室に混在しています。
世界を見つめる目に、ちょっとした空想や仮定といったものを加え、アダムは作品を制作します。
[ 左:ここ(2015年) -ももひき、冨士屋Gallery一也百の庭から剪定した枝(アーティストの実家 英国・ケント市の方角[280°43′00′′]を指しているもののみ ]
[ 中:どこか他の場所(完成させるために) (2015年) - 映像(シングルチャンネル)1時間24 分 ]
[ 右:主催者は嵐の後まで宴を延期した (2015年) - 竹、ミクストメディア、包帯(サイズ可変)、馬場ひろこさんと志水健一さんの額入り写真2枚 ]
例えば、別府で実際に発行されたポストカードを題材にした映像作品『エデンの園からの追放』は、2種類の葉書の差異をアダムが発見したことから始まった作品です。撮影のエキストラとして集まった人々は、「なぜ左にいる女性たちは消されたの?」といった大きな違いや、「奥にいるこの人はなぜ右に視線をやっているの?」といった細かな出来事まで、このポストカードの撮影の瞬間に起こった出来事や作為について想像をめぐらしディスカッションをします。
1965年当時に別府で発行されたポストカード2種 別府市内から集まった男女と、ポストカードの中の風景の再現や分析をする、アダム(2015年7月7日)
●スタパ・ビズワズ Sutapa Biswas
[ 滞在期間=6月25日~7月31日 ]
1962年、インド生まれロンドン在住、女性。幼い頃よりロンドンで育つ。イギリスのリーズ大学、スレイ ド・スクール・オブ・アート、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学ぶ。テート・モ ダン(イギリス)、ハバナ・ビエンナーレ、イェール大学アートギャラリー、ニューバーガー 美術館(ニューヨーク) 等で、国際的に作品を発表している。
◎ 作品について
スタパは、着物を着る習慣のある女性や着物を受け継いでいる女性にインタビューをして作成したビデオ作品などで、空間を構成しています。
[ 奥:暗い濃紺に銀緑が重なる 丸ごと飲み込み吐き出さないで(2015年) - ネオン ]
[ 右:またね (2015年) - 映像(シングルチャンネル)、34分39秒 ]
着物そのものについての分析ではなく、着物を通して紐解かれる家族の歴史や彼女たちの価値観などを、映像やタペストリー、ドローイングにまとめています。
リサーチの様子。別府市の方を中心に、5名の女性にインタビューをしました
|会場について|
冨士屋Gallery一也百は、鉄輪温泉の風情を残す、明治32年生まれの旅館建築。福岡からの湯治(とうじ)客の多かった鉄輪で、筑紫の炭坑王と呼ばれた伊藤伝右ェ門や麻生太吉が利用することもあったと言われ、木造旅館としての格式の高さが偲ばれます。
平成8年に旅館の暖簾を下ろしてのち、老朽化のため一時は取り壊しが検討されていましたが、降幡廣信氏によって再生工事を施したことで、明治の建築当初の趣きが蘇り、次の百年に伝えるにふさわしい建物になりました。「一也百(はなやもも)」は 百余年経た建物をもう百年伝える再スタート、という気持ちを込めて名付けられています。
今回 展示に使用している和室はいずれも本格的な書院造りで、床板や床柱、天井板等に銘木が使われています。
* 冨士屋Gallery一也百では、ふだんより音楽、文化、食のイベントを定期的に開催しているほか、カフェ(1F)
やセレクトショップも併設しています。
営業時間 10:00〜17:00 月・火 定休
※ KASHIMA2015 の展覧会期中は、11:00〜18:00(火・水 定休) にて営業しています。
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■プログラムキュレーター=キース・ウィトル(英)
■主催=NPO法人 BEPPU PROJECT
■共催=別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会
■助成=平成27年度文化庁文化芸術の海外発信拠点形成事業
■後援=ブリティッッシュ・カウンシル
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